毎年夏、稲作農家の方が当たり前のように行う「中干し」という作業があります。出穂前の6〜7月に水を落として田んぼを乾かし、根を張らせ、分げつを調整するための大切な工程です。多くの農家さんにとって、何十年も繰り返してきた慣れ親しんだ作業のひとつではないでしょうか。
実は今、この「中干し」を例年より1週間長くするだけで、環境に貢献しながら農業収入を増やせる仕組みが注目を集めています。それが「J-クレジット制度」を活用した水田メタン削減の取り組みです。
⚠️ 制度情報は毎年改定されます。本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。申請前に必ずJ-クレジット制度事務局・各省庁の最新情報をご確認ください。
📋 この記事の目次
水田は意外な温暖化の「原因」だった
稲作農家の方に意外に思われるかもしれませんが、水田は温室効果ガスの排出源のひとつです。水を張った田んぼの中では嫌気状態(酸素が少ない状態)が生まれ、メタン生成菌と呼ばれる微生物が活発に働き、メタンガスを大量に発生させます。
メタンは二酸化炭素の約28倍の温室効果を持つ強力な温室効果ガスであり、日本国内のメタン排出量の実に約40%が水田由来だとされています。農業が環境への負荷を持つという事実は複雑な思いをもたらすかもしれません。しかし裏を返せば、水田の管理方法を少し変えるだけで、大きな環境改善効果が生まれるということでもあります。
中干しを7日延ばすだけでメタンが3割減る
そこで注目されているのが「中干し期間の延長」です。通常の中干しより7日間以上長く水を抜いた状態を続けることで、メタン生成菌の活動が抑えられ、水田から発生するメタン量を約30%削減できることが農研機構の研究で明らかになっています。
農林水産省も「みどりの食料システム戦略」の重要施策として、この取り組みを強力に後押ししています。
💡 収量への影響は?
実際に取り組んだ農家から「延長前と収量は変わらなかった」という報告が相次いでいます。営農上のリスクは非常に低いと言えます。
J-クレジットで「環境貢献」が収入に変わる
環境改善の効果があるのはわかった。でも、それが収入に結びつくのか——そこが農業経営者として最も気になるところですよね。
その答えが「J-クレジット制度」です。温室効果ガスの削減量を国が認証し、企業や自治体が購入できる「クレジット」として発行する仕組みです。2023年3月、農林水産省はこの制度において「水稲栽培における中干し期間の延長」を正式な方法論として承認。これにより、中干しを延長した稲作農家が削減したメタン量をクレジットとして販売し、収入を得られるようになりました。
参加の手順はシンプル
「難しそう」「手続きが大変そう」と思われた方も、ご安心ください。実際の参加手順は思いのほかシンプルです。
⚠️ 申込期限にご注意ください
2026年産(令和8年度)の申込期限は2026年9月30日です。今年の稲作シーズンからすぐに取り組めるチャンスが残っています。
地域全体で広がる環境農業の波
この取り組みの魅力は、個別農家の収益向上にとどまりません。地域全体で広がることで、農業地域のブランド価値向上や地域活性化にもつながります。
📌 長野県新信濃村の事例
2023年にたった1農家だった参加者が、2024年には76農家へ一気に拡大。村全体で取り組む「環境農業の産地」としてのイメージが生まれ、地域農業に新しい誇りと付加価値をもたらしています。
農業が「食料を生産するだけ」の産業ではなく、「環境を守り、地域を活性化する産業」として再評価される——そのような時代の流れが、まさに今始まっています。
GREEN BENEFITからのメッセージ
GREEN BENEFITは「農業×環境×地域活性化」を軸に、農業経営者の皆さんが持続可能な経営を実現するための情報と支援を提供しています。水田の中干し延長によるJ-クレジット活用は、まさにこの三つを同時に実現できる取り組みです。
まずは、アグリノートやクボタのサービスページで詳細を確認するところから始めてみてください。作業を少し変えるだけで、農業の未来が少し明るく変わるかもしれません。
※ 本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。制度は毎年改定されます。最新情報は各省庁・J-クレジット制度事務局の公式サイトをご確認のうえ、申請前に必ず専門家にご相談ください。
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